「八の字プラン+田園風景+現代の民家」=「景をなす家」
Concept|コンセプト
敷地は岐阜市郊外の農村集落内にあり周囲には田園風景が広がる。その景色にとけ込んで違和感を与えない現代の民家がつくり出す新しい集落景観を演出することにコンセプトをおいた。隣家がなく四方正面の「景をなす家」となった。そのため、形、色、材料等に配慮をした。
この集落は地縁・血縁などによる「報恩講」「お講様」を毎月、各戸が持ち回りで行っている。そのため各戸には10~15人位入れる2間続きの和室が必要である。県庁所在地都市の中で稲作文化が未だ根づいていることに驚いた。
そのためこの住宅は、現在の住宅のほとんどが「ケ」の場である「日常空間」となっている中で、「非日常空間」という「ハレ」の場が大きく占める結果となった。それが、『客室棟』と『住居棟』と分離するプランの要素ともなった。
施主の以前の住居は、居間に光の差し込みが少なかった。新居を建てるにあたり日当たりの良い家にしてほしいとの要望であった。そのため、居室を真南に向けることにした。しかし敷地が真南を向いていなく真北の軸線と敷地東西線の角度が20°のずれを生じた。これを対象軸に『客室棟』と『住居棟』を分けた。結果的に「八の字プラン」になった。
この地域は昔から水の漬きやすい地域であった。最近では河川改修が行われ水害がなくなった。しかし、万一の洪水対策としてH=1,700mmまで盛土することにした。従来、農村では洪水対策として住居は敷地を高台状にして建てた。新居は地盤を上げたことによる不安定化をさけるため平屋とした。
この家は加子母村の工務店で造ってもらったため、材料は東濃桧を基材とした国産材を使用することができた。中には節もある間伐材なども利用した。工法は在来軸組工法の和小屋方式で、地棟に大きな丸太を使い住居棟の居間には大黒柱を立てた。これらの材料は材料検査の時に寝かせてあるのを見たときは、大きく過ぎると感じられた。しかし棟上げ時に地棟の位置に組み上げられると安定感があり全体のバランスがとれた。
この物件では住まいづくり講座という形で現場見学会を企画した。屋根瓦が拭き終わり、外壁の施工に取りかかり始めた時期に行った。この時期は木造在来工法の骨組みがしっかりわかる時期であった。見学会の多くは完成時におこなうことが多く、躯体を意識的に考える機会が少ないためこの時期を選んだ。30人程の人々が訪れた。完成後、この人々に案内を出し工事中とでき上がった状況の違いを体験してもらった。